結婚式のスピーチで「オチ」は必要なのでしょうか?その答えは単純ではありません。しかし、オチにこだわりすぎる姿勢の裏に隠れた問題について考えてみる価値はあります。
結論から申し上げると、「オチ」は必ずしも必要ではありませんし、むしろその扱いには慎重さが求められます。なぜなら、結婚式の主役はあくまで新郎新婦であり、スピーチをする上司は脇役だからです。脇役としての務めは、二人を祝福し、場の雰囲気をより一層温かいものにすること。それ以上でも以下でもありません。
それにもかかわらず、「自分のスピーチで笑わせたい」「場を仕切りたい」といった思いが先行してしまうと、スピーチは次第に“自分の見せ場”になってしまいます。これは一種の自意識過剰とも言えますし、最悪の場合、場の空気を壊してしまうことにもなりかねません。結婚式は、笑いを取るためのリサイタルではありません。あくまでお祝いの場であり、慎みと敬意が必要です。
では、ユーモアやオチを一切使ってはいけないのかと言えば、そうではありません。ポイントは「何のために話すのか」を明確にすることです。笑わせようとするのではなく、「喜んでいただく」「和やかな気持ちになってもらう」という目的であれば、自然なユーモアはむしろ歓迎されるでしょう。その場合の「オチ」は、単なるギャグではなく、あたたかみのある結びとして機能します。
例えば、新郎との仕事上のエピソードの中で見えた人柄を軽くユーモラスに紹介したうえで、「そんな彼だからこそ、○○さんと素敵な家庭を築いていくことと信じています」といった結びにすれば、それはオチというよりも「思いやりある締めくくり」となります。
大切なのは、自分が目立つことではなく、主役を引き立て、列席者に心地よく聞いてもらうこと。自分が何を伝えたいのか、それは新郎新婦のためになっているのか——その視点を忘れずにいれば、形式にとらわれることなく、良いスピーチは自然と生まれるはずです。スピーチにおける最大の「成功」は、自分の言葉が、誰かの心に温かく届くこと。それを目指してこそ、真の祝福になるのではないでしょうか。