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結婚式 親族代表挨拶 例文「父親代わりの叔父から甥へ」
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結婚式のスピーチには、さまざまな立場があります。上司としての祝辞、友人代表としての挨拶、親としての言葉──その中でもひときわ特別な想いを帯びるのが、「父親代わりとして甥を見守ってきた叔父」の立場です。これは他のどの役割とも異なり、時間の重みと深い感情が、静かに、しかし確かににじみ出る立場と言えるでしょう。
父親を早くに亡くしたり、事情があって不在だった甥。その成長を傍で支え、言葉少なに寄り添い、時には厳しく、時には優しく接してきた叔父だからこそ語れる言葉があります。スピーチにおいて大切なのは、そのすべてを声高に叫ばずとも、自然と伝わるようにすることです。
たとえば、「長い時間、そばで彼の成長を見守ってきました」といった表現には、それだけで実父の代わりを務めてきたという想いが滲みます。「兄からバトンを預かるような気持ちで…」という一言があれば、もう十分なのです。聴いている人々は、そこに父の不在と、それを補ってきた愛情を感じ取ることができます。
思い出話をするなら、できるだけ“親としての時間”として語ることが効果的です。キャッチボールや釣り、自転車での遠出など、ふとした休日の風景は、誰もが「父と子」を連想するもの。そうした情景を通じて、叔父がいかに父親に代わる存在であったかが自然に伝わります。そのなかで甥がどんなふうに成長していったか、どんな表情を見せ、どんな瞬間に優しさを見せたかを、等身大の言葉で語ることができれば、それだけで会場の空気はしっとりと温かくなるはずです。
とはいえ、感情を全面に出しすぎると、聴く人にとっては重く感じられてしまうこともあります。大切なのは、感傷に流されすぎず、けれど確かな想いを込めること。たとえば、「今日は胸の奥で、兄に『やれやれ、ひと段落がついたよ』とつぶやいています」といった語りは、内に秘めた感情を静かに届ける力を持っています。その一言が、亡き父にも届いているような感覚を、聴いている人にも分かち合ってもらえるのです。
さらに、スピーチのどこかに「父ならこう言ったかもしれない」という代弁の言葉を添えると、より一層心に響きます。たとえば、「兄も今日の姿を見て、きっと喜んでいると思う」「兄貴の分まで、今日ここに立てたことを誇りに思う」といったひとことは、甥にも、聴く人にも、そして語り手自身にとっても大切な節目の言葉になるでしょう。
そして最後には、やはり晴れやかな祝福で結びたいものです。どれほど深い想いが語られたとしても、結婚式という場にふさわしいのは、これからのふたりの人生への前向きな祈りです。「穏やかで、笑顔に満ちた日々が続いていきますように」──そんな一言が、スピーチ全体をやさしく包み込み、余韻を残してくれることでしょう。
父親代わりとして語るスピーチは、決して簡単なものではありません。けれども、長年の想いを静かに届けたいという気持ちがあれば、言葉はきっと聴く人の心に届きます。「父親ではないけれど、確かに父としての気持ちでいた」。そのことが、構えず自然体で伝わるような語りこそ、甥にとっても、家族にとっても忘れがたいものになるはずです。