人と人とのかかわりの深さに、歳月の長短は関係ないのだなあ、との思いを改めて実感させていただきました。
今回の依頼者様は、企業様向けのAV機器やオフィス用品を販売する会社の社長様で、社員である新郎の結婚披露宴で述べる乾杯の挨拶の作成をご依頼いただきました。
依頼者様の話しぶりからは、終始一貫して上司と部下の関係性を第一に大切にしようとの厳しさ、自戒の強さが感じられましたが、それでもにじみ出る友情の厚さに、お二人の絆の深さが自然と表れていて非常に好感を抱かせてくれます。
ご自身が立ち上げられた会社へ、前職でお知り合いになられた新郎、そして新郎の公私にわたるパートナーである新婦、ご両人を迎え入れられたのがまだ一年ほど前のこと。
それ以前のお付き合いがさぞ長いのかと思いきや、出会われたのは2012年とのことで、実際には四年ほどの歳月しか経過してはいない。
けれど四年を「しか」と捉えてしまう感覚こそが、寂しい考え方なのかも知れません。出会って三日しか経っていなくても深く分かり合える繋がりもあれば、何十年苦楽を共にしようと結局は表面的な付き合いに終始してしまう関係性もある。
人が人に「想い」を深めることに、時間は、関係あるようでいて実はそんなでもないのかも知れません。
依頼者様が、結婚されるお二人にどうしても伝えたい言葉としてご用意されたのが、
自分よりも幸せになってほしい。
との願いであり、そう語られる依頼者様のお声には、何とも深い親愛の情がたっぷりとあふれています。
自分よりも幸せに、と率直に思うことができるのは、相手の存在をかけがえのないものであると実感できているからですし、それは友情を超え、まるで家族のように、つまりは自分自身の一部であるかのように、相手のことをとても大切に感じられている証です。
そんな風に信頼を寄せることのできる相手に巡り合えるのは貴重なことですし、一生の中でそう何人もいるものではないと思います。
だからこそ依頼者様は、
何も変わらないんだよ。自分たちが、家族が幸せで、そんな私たちはこれから先もずっと一緒にいたいんだ、
と素直なお気持ちをためらいなく表すことができるのでしょう。「想い」を言葉にして発するのには、実はとてもたくさんの勇気が必要です。「想い」が深ければ深いほど、軽はずみには口にできないものですし、逆を言えば、軽はずみに口にできるのであればそれは「想い」とは呼べないのだと思います。
ためらうことなくまっすぐに、その「想い」を言葉にすることができる依頼者様にとって、新郎への信頼は、信頼などという表現を超えた深く揺るぎないものなのだと感じることができ、お話しを聴いているこちらまで、清々しい爽快な気分にしてくださるのだと思います。